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悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記 (集英社文庫)
木村 元彦
定価: ¥ 760
販売価格: ¥ 760
人気ランキング: 39935位
おすすめ度:
発売日: 2001-06
発売元: 集英社
発送可能時期: 通常24時間以内に発送
民族自決とは何か?
『オシムの言葉』から、ユーゴスラビア崩壊に興味を持って、木村元彦をもう一冊。
ユーゴスラビアサッカーに魅せられた著者が、ユーゴスラビアの崩壊と、そのプレーヤーを初めとするサッカー界への影響を、現地に何度も足を運んで見続けたドキュメントだ。どうしようもない歴史に押し流される人々。話に引きつけられる。
『オシムの言葉』に少し触れられていた民族主義の暴走が、本書では克明に追われている。紛争の始まりには独立に積極的でなかった人が、紛争が進むに連れて強烈な民族主義的発言をするようになるのは恐ろしいことである。それは対立を煽るテロ組織を勢いづかせて、紛争の解決を不可能とする。独裁者が勝手に戦争を起こすのではなく、衆愚が戦争を起こすのだ。そして、大衆はほぼいつでも衆愚なのだ。
民族自決は良いことだというのが現在の常識だが、そうしてどんどん細かくなっていったのがユーゴスラビアの崩壊だ。民族自決ったって、どの範囲を民族と言うかを突き詰めていくといくらでも細かくなる可能性がある。ベオグラードのサッカーチームのサポータ間の仲の悪さも有名だそうで、ま、これも宗教の信者間の対立みたいなものだし、共和国対立からここまで細かい分裂まで“民族”の定義って連続なのだと思う。私は関西で生まれ育った人間だが、最近の2チャンネルの書き込みの中の関西人に対する露骨な差別発言などを見ていると、「お国びいき」極めて偏狭なものに簡単になることに戦慄を覚えて、ユーゴスラビアの歴史が人ごとには思えなくなる。
ユーゴスラビアの人名や地名が大量に出てきて、全然覚えられなかったのだが、それもあまり欠点になっていない。文章も読みやすく力がある。大変お薦め。
ユーゴサッカー戦記というよりもユーゴ現代史という感じです
ユーゴスラビア代表、ユーゴリーグ等のユーゴサッカーに関する取材を続けながら、ユーゴスラビアで起こっている出来事について書かれてあります。
特にこの時代のバルカン半島で混乱している様子がよく取材してあり、現地の生の声が分かります。
空爆当時のユーゴスラビアの様子などよく取材されています。
また、メディアの報道と戦争というものについても考えさせされました。
空爆当時のユーゴスラビアで何が起きていたのか、住民はどんな思いだったのかということが伝わってきました。
また、政治に巻き込まれることになったサッカー選手たちの話も考えさせられるものでした。
騙されているのは我々自身だ
読み始めたきっかけはなんのことはない軽いものだった。
暇つぶしになる軽い本を書店で探していたときに、
ピクシー(ストイコビッチのこと)が大写しになった表紙と、
挑発的なタイトルに惹かれて手にとった。
名古屋出身の私は、いまだに名古屋グランパスとピクシーのファンだが、
暇つぶし以上のものは期待していなかった。
この種のスポーツものは、軽く読めて暇つぶしには持って来いのはずだ。
それにしても、ここまで読む前の期待を大きく外した上に、
とてつもなく大きな置き土産を残した本も他にない。
これは単なるスポーツものに留まらないすさまじい本なのだ。
作者は誰もが行きたがらない内戦下の旧ユーゴスラビアに足を踏み入れ、
そこで見て体験したものを生々しくレポートしてくれる。
それは、旧ユーゴに関する報道をなんとなく見聞きしてきた我々が持つ
「ミロシェビッチ率いるセルビア=悪者」と言う常識とは
大きくかけ離れたものなのだ。
本に書かれたほとんどの情報が「伝え聞いたこと」ではなく、
「自身が見て体験したこと」であることは、情報として実に貴重だ。
独裁主義国家における言論統制を伝え聞き、
それを我々は自身のこととは考えないだろう。
しかし、この本は暴いてくれる。
米国の国益のために巧妙に制御されたプロパガンダに
騙されているのは我々自身なのだ。
この本は単なる「事実の暴露」だけに留まらない。
私は通勤電車でこの本を読みながら、
恥ずかしげもなく何度も涙を流した。
作者は、ピクシーに代表されるユーゴスラビアサッカーの美しさに惹かれ、
その魅力をひたむきに伝えようとしてくれる。
そしてそれはなぜか、無性に悲しい。
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